ラ・デンパネラ

自分の世界を開放。精神が肉体を超越した状態を表現する感じだといいな。管理者が暇なときしか来ないかもです。

小説版よるにぢちの夜その18:了2.終幕と終幕





『天使と悪魔』、下巻に入ったよー!

あっれええええええええ!?

あの人があっち側のあれだと思ってたのに死んだっぽいぞおおおおおおおお!?

口封じとか裏切り防止とかの可能性もなくはないか!?

いや、それともあっちか!? あいつか!?

ちっきしょおおおおおおもしれえなあああああああ!!!!

しかもアレですよね!?

像の配置とか歴史はノンフィクションですよね!?

ダンブラウンぱねええええええ!!!!!!!!!











 南さんは一瞬物憂げな顔を見せると、一呼吸おいてから一気にまくし立てた。
「さあ、もう行かせてもらうぞ。私がドアを閉めるまでに動くような者がいたら、容赦なく切りつける!」
 まずい! そうは思ったものの、この状況に対処する策なんて全く思い浮かばなかった。
 カランカラン、と、玄関のベルが鳴る。成す術もなく行かせてしまった!
「ぼ、僕が下手に刺激したから!」
「さっきの状況じゃ仕方ない。透君だけじゃなく、誰も近づけなかった。……とにかく、なんとかしてこのことを誰かに知らせるか、追うしかないだろう」
「追う!? 追う方法があるんやったら、なんでもっと早いうちにここを出なかったんや!」
「いや、追うといっても、足でだよ。どうやらあの南とかいう人は、ペンションから見えない場所に逃走手段を隠しているみたいじゃないか。春子さんも連れているし、足も悪い。まだ勝機はあるはずだ」
「今なら……! まだ追いつけるっちゅうことか!」
 走り出そうとする隆君を、僕は一喝した。
「待つんだ隆君! その春子さんが問題なんじゃないか!」
隆君は、身内の危機との板ばさみにたじろぐ。が、美樹本さんはとんでもない案を出した。
「追いつかれるなら、南さんはもし春子さんを刺しても逃げ切れない。結局捕まるならわざわざ刑を重くもしないだろう」
「そんな! 衝動と理性、どちらが勝つかに賭けてまで追う必要がありますか!?」
「せやけど、山を降りてからおかんが無事に帰ってくる保証もないし、警察に連絡してる暇もない!」
 ……! 考えている時間は、ない!
「行きましょう!」
 意を決して僕が叫ぶと、隆君を筆頭に、力のありそうな一同は続いて飛び出した。
 しかし、扉をぶち開けたとき、すでに南さんたちの姿は……。
「あっちや!」
隆君がスキー場への一本道を指差した。雨で視界が遮られる中、それでも不安定な地面を蹴って、一斉に走り出す。
「そうか……あっちなら確かに、木が密生していない、開けた場所もあったはずだ」
俊夫さんが、スポーツマンらしく息切れのしない喋り方をする。
「それに、考えてみればそのあたりにしかペンションから見えないように隠せる場所なんてないでしょう」
美樹本さんも、野生の力がみなぎったかのような勢いで口と足を同時に動かす。僕はというと、喋っただけでもペースが落ちそうだ。だが、「足が悪いとなれば相当近くに……」などと、心の中で勝手に意見は述べていた。
 ……見えた!
俊夫さんも見つけたらしく、一行はスキー場への道を外れ、左手の林の中を斜めにショートカットしながら、獣道を逃走する二人へ接近していく。
 そのとき、後ろを振り返りながら走る春子さんの目が、僕と合った気がした。
 瞬間。何かにつまづいて、あるいはそれを装って、春子さんが濡れた土の上に倒れて転がる。手をつないでいたせいで一緒にバランスを崩し、果物ナイフを取り落とした南さんは、僕たちの姿が目に入ってか、ぎょっとして一人で駆け出した。その先には、赤い、頑丈そうな四輪駆動車。
 南さんはサッと乗り込むと、僕たちへ向かって一気に発車させた。加速がはやい! 追っ手となった僕たちは、同時に左右へダイブし、それを避けた。車は春子さんの脇を通り、スキー場への道へ躍り出る。90°のターンを見事に決めると、そのまま一瞬にしてスキー場方面へ下って行った。
 ……逃げられた!
「おかん!」
隆君の声に振り返ると、美樹本さんと俊夫さんも、既に追跡を諦めているようだった。春子さんを救えただけでも大成功だ。あとは警察に任せれば……。
「せや! 早いとこ電波の届く場所まで行って、警察に連絡せな! ちゃんとナンバープレートまで目に焼き付けたで!」
泥に倒れこんだおかげで、汚れた上に立つ気力もないように見えるものの、かすり傷すらなかったらしい春子さんの無事を確認すると、隆君も思い出したように叫ぶ。それにしても、よくそんな機転がとっさにきくものだ。僕なんか、赤い四駆としか覚えていなかった。
 その気恥ずかしさを隠すように、僕は隆君に声をかけた。
「よし、春子さんは体力の余ってる誰かがペンションまで連れて戻るようにお願いします。殺人鬼が潜んでいないことも分かったし、僕は誰かとゆっくり慎重に道を下って、電波が通じたら警察への連絡をします」
「よし、じゃあ、僕が春子さんに手を貸すよ。隆君は、僕と一緒に来るかい?」
「ああ、せやな……そうさせてもらうわ」
美樹本さんが志願してくれた。これで、外部連絡班は僕と俊夫さんに決まったようだ。
 そのとき、近いような、それでいて遠いようなところから、衝突音が響き渡った。
「何だ……? 事故……? まさか、南さん!?」
俊夫さんと目が合う。
「隆君と美樹本さんは、春子さんをお願いします」
僕たちは坂を下り始めた。

「やっぱり、こんな場所と天気じゃ、慣れてないと無理があったんだ」
俊夫さんが見つめながら言う。視線の先は、大木の枝がフロントガラスを割って突き刺した、南さんに向けられている。車はみごとにひしゃげ、うっすらと煙を吐き出していた。
 しかし、僕の視線はそれよりも下へ向けられた。ぬかるんだ地面には、ハンドルをきろうとした後も、ブレーキを踏んだ様子も残っていなかったのだから……。

 ペンションへ戻ると、美樹本さんと隆君から既に一部始終を聞いていたらしい皆が、泣き笑いで迎えてくれた。真理がその安堵の表情のまま、僕と俊夫さんにタオルを差し出す。
「田中……あ、南さんは?」
みどりさんが言った。どうやら、衝突音のことは聞いていなかったらしい。
「み、南さんは……木に激突して……」
先ほどの生々しい状況を思い出して顔を伏せながら声を絞り出すと、それを聞いた春子さんが突然泣き出した。もしかしたら、逃走の最中になにか聞かされていたのかもしれない。
 だが、その姿を前にしては、理由を質すことなど出来るはずもなかった……。






  1. 2009/07/10(金) 08:15:09|
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